先日、夏の幸せのアパートメントを記事にしましたが、今回はしんみり想い出の街の旅をお話ししたいと思います。

2016年の春まだ早い時期のオランダの買付けの旅。実は2015年12月に20年間一緒に暮らした黒猫が居なくなり、うなだれたまま4ヵ月、その気持ちをずるずる引きずっての買付けの旅でありました。

黒いクッションを見ては黒猫かと思い、物音がすれば黒猫かと思い、べそべそしたまま飛行機に乗り、着いたのはオランダ南東部のオランダ最古の街マーストリヒト。大きな川を挟んだ旧市街には11世紀に建てられた教会など古い建物が立ち並び、少し離れれば田園風景が広がる緑豊かな街です。

ここに宿を決めたのは、マーストリヒトに住むオランダ人の友人宅へお邪魔するためです。宿はマーストリヒト中央駅の目の前。部屋の窓からは駅前広場と駅舎、塔が見えます。この宿の小さな窓から、眠れない夜は良く外を眺め、駅から下りてくる人、行きかう人などを見ていました。

駅前の広場には一軒の屋台のケバブ屋さん。屋台といっても大きなトラックの屋台で、小さい日本人が見上げると、店主のおじさんは顔しか見えません。このケバブ屋さん、お昼から始まり、閉店時間は午前2時。毎日、お昼から深夜まで。夜中に誰か来るのかとごそごそ起きて見てみると、数人のお客さん。日中も並ぶほどではないけれど、いつもちらほらお客さん。毎日、毎日夜中の2時まで。辺りは真っ暗な駅前広場にケバブ屋さんだけが煌々と明るく光っています。

ここに泊まっている間ずっとその駅前広場のケバブ屋さんを見ていました。

毎日屋台に立つおじさんだって、当然悲しいことだってあるだろうし、悲しいことがあっても毎日まいにち夜中の2時まで何事もなく、変わりなくいつもの屋台に立っているんだなと、見知らぬケバブ屋のおじさんに共感してしまいました。

遠いオランダの地、ドイツとベルギーに近い街の駅前ケバブ屋のおじさん、今日も元気ですか。夜中の2時まで頑張ってますか。

買付けの中でも想い出深い旅となった2016年の春でした。

ちなみに、注文するのも躊躇うくらいすごく無愛想なおじさんでした。







友人宅のかわいい庭には山羊と鶏。思わず「食べるの?」と聞いてしまったけれど、大切な家族なんだそうです。ごめんね。